イスラエルやアメリカ等のユダヤ教徒の人口が多い国では3月中旬から3月末にかけてマッツァー(matza)というクラッカーのようなものを大量に買い一週間分家にストックしておきます。(ペサフの期間はグレゴリオ暦に基づいて決められているので、毎年日付が微妙に違います。)
マッツァーとは水、塩、小麦、油だけを使い、発行を防ぐために所要時間18分で作り上げるユダヤの宗教的なクラッカーのようなコーシャフードです。
マッツァーはパリッと香ばしく、小麦粉の風味をより豊に感じるなどの意見がある反面、人によりマッツァーは焦げていて段ボールのような味がするなどという意見もあります。
味の好みは人それぞれですが彼らは必ずしもマッツァーの味が好きで買っているわけではありません。
彼らはユダヤ教で一年に一回あるペサフという宗教的記念日のための準備をしているのです。
ペサフとはヘブライ語で過越しを意味し、家族が食卓につきマッツァーやセーデル(seder)等の儀式的なコーシャなメニューの食事をとって祝います。
宗教的な起源はユダヤ教の聖典にある出エジプト記に記してあります。
当時、エジプトで奴隷として労働を強いられていたユダヤ人の中でリーダーになりエジプトの王ファラオに盾突き、ユダヤ人を解放してイスラエルへと導いたモシェが深く関わってきます。
長い期間の間奴隷として労働を強いられてきたユダヤ人を解放しろとモシェがいくら言っても、ファラオがそれを聞き入れる訳もなく、帰還しようとするユダヤ人の妨害を続けるファラオに神は十の災いを与えました。
それは、ナイル川に流れる水を血に変えたり、大量のカエルが出現し危害を加えたり、家畜に疫病をはやらせる等の恐ろしい災いがエジプト人に降り注ぎました。
そして、最後の災いが人間から家畜に至るまで、エジプトのすべての初子を撃つというものでした。
神は、二本の門柱と、かもい(外に繋がる出入口、門の両淵と上に取り付けられた横木)に子羊の血がついていない家はその災いを降らせることをモーセに伝えました。
その災いに関して何も知らされていなかったファラオを含めた全てのエジプト人は、二本の門柱とかもいに子羊の血を付ける訳もなく、エジプト人全員の初子が神によって撃たれました。
次々に神から降り注ぐ災いに屈しなかったファラオも、自分の初子を撃たれユダヤ人の解放をついに許しました。
二本の門柱とかもいに、子羊の血のついているユダヤ人の家にはその災厄が降らなかった(過ぎ越された)ことがペサフ(過越し)の由来になっています。
この過越しのお祝いとマッツァー、何が関係しているのか疑問に思う人もいると思います。
いくつか説はありますが、エジプトを去る前日にマッツァーを食べるように神から啓示を受けたユダヤ人は、その日だけマッツァーを食べその晩をペサフ(過越しの祝い)としました。しかし、エジプトを去るときにパンを焼いて持っていくだけの時間がなくマッツァーしかなかったのでペサフが一週間ほど続いたと言われています。
エジプトで奴隷生活をしていた際マッツァーを食べていたこと、パンを十分膨らませる時間が無かったことを記念してペサフにマッツァー食べることになったというのが一番有力な説です。※
以上がペサフの宗教的な起源になりますが、現代になってペサフを祝う時には一体何をするのでしょうか?
ペサフにはマッツァーを食べる、ワインを四杯飲む等、宗教的に意味が込められたコーシャな食べ物、飲み物を決められた順序で飲食するセーデルというものがあります。
そして、ユダヤの何千年にも渡る歴史を振り返るためにハガダー(haggadah)というユダヤ教の冊子に基づいて十五のもステップを踏みセーデルを進めます。