コーシャとは何なのか?

皆さんコーシャという言葉を聞いたことはありますか?

Middle eastern or arabic cuisines, falafel, hummus, tabouleh, pita and vegetables on a concrete background, view from above

コーシャ(kosher)とは、ヘブライ語でカシェル(כָּשֵׁר)という言葉が語源になっていて、ヘブライ語でカシェルとは相応しいという意味になります。
コーシャとは正にヘブライ語を扱うユダヤ人にとって相応しいものという意味になります。
では一体何がユダヤ人にとって相応しいのでしょうか?

そもそも相応しい「もの」というだけではあまりピンと来ないと思うのですが、具体的に言うと相応しい「もの」というのは食品、食器、調理器具、サプリ、医薬品、化粧品、洗剤、衛生用品、掃除用品などの口に入れるものや、口に入れるときに使う道具又は道具等を整備するための製品などに主に使われます。
ユダヤ教では聖典に基づいてそれぞれ何が自分たちに相応しく、何が相応しくないか、常日頃から見極めコーシャに沿って生活を送っています。
コーシャには様々な厳しい規定があり、その全ての規定を守りながら生活するのはとても困難です。

どう言った規定があるのかを説明していく前に、何故ユダヤ教徒はコーシャを守るのかを話したいと思います。

答えはとても簡単で、ユダヤ教の聖典にコーシャを守るように書いてあるからです。
聖典に書いてある内容に従うことがユダヤ教徒の使命と考えられているので、アメリカやヨーロッパ辺りのユダヤ教徒の人口が多い地域ではコーシャという文化は常識とされています。
ユダヤ人の人口が多い国の中でも、アメリカのユダヤ人の人口は僅か2%しかおらず、ユダヤ人だけがコーシャ食品を食べているなら到底常識にはなりえません。
ですが実際にはアメリカでは41%の加工食品がコーシャフード※2なのでコーシャフードを食べているのはユダヤ人やユダヤ教徒だけではないのです。          
コーシャの規定を熟知し、コーシャ認定を行っているユダヤ教指導者が原材料や、製造工程での検査を行った上で判断し、規定に合格したものだけがコーシャフードになるのです。
ジャンクフードが多く食品の安全性に疑問を持つアメリカ人にとってコーシャフードは正に安心安全のイメージが強いことから宗教の規律の枠を超え、今は食品が安全か否かの判断基準になりつつあります。

ではどう言った食品がコーシャになりえるのでしょうか?

コーシャの規定の中にはまず食べられる物と食べられないものの二つに分かれます。
豚などの決められた肉やカニ、エビなどの甲殻類全般という風に食べられないものが厳しく定められています。
そして食べられる食品を、肉製品(バサリ)と乳製品(ハラヴィ)とどちらにも属さないパルヴァの三つのグループに分けます。
なぜ三つのグループ分けを行うのかというと肉製品と乳製品は決して混ぜて料理してはいけないからです。
そしてそれぞれの調理器具や食器も別に用意し、それぞれ別のシンクを使い調理します。
いくらコーシャの食品を集めてもそこの二つが混ぜ合わさればその時点でコーシャではなくなってしまうのです。
そしてさらに厳しい規定では肉製品を食べた後は6 時間乳製品が食べられず、乳製品を食べた後は1時間肉製品が食べられない等の更に厳しい規定を超正統派ユダヤ人は守って日々暮らしています。
また、個人のユダヤ人の信仰度や宗派などによって、肉製品を食べた後に乳製品を食べたい時は手と口を洗うことで間の時間を設けず乳製品を食べられる等のルールがあります。(逆もしかり)
ですがもちろん肉製品にも乳製品にも属さない野菜、穀物、果物、魚などの食品があり、それらはパルヴァと呼ばれ調理する際の規定もなく食後の規定もありません。
コーシャの規定に沿った食べられる料理は肉製品(バサリ)、乳製品(ハラヴィ)そしてパルヴァの3つのグループに分けられると説明しましたがそれだけで食べられる訳ではありません。それぞれのグループの食材を調達する際に決められた規定もあります。
肉製品(バサリ)の場合は動物を締める際に痛みを出来るだけ感じさせない方法で憐れみをもって締めるや、コーシャな動物から搾った牛乳はコーシャだがコーシャじゃない動物から搾った牛乳はコーシャじゃないなど直接命が関わってくる食材を調達する時に厳しい規定があります。

ここで皆さんなぜ魚も生き物なのに肉製品や乳製品のように締めるときの規定や調理する際の規定がないの?と疑問に思う人もいると思います。
魚は海、又は川から引き上げた時に締める、捌くまでもなく既に生きていないからです。
また、乾燥した台地から生まれた牛や鳥はそれぞれ決まった締め方で順番に臓器を切る方法を行っていますが、魚はユダヤ教では大地より神聖とされている水から生まれるためいかなる儀式的な屠殺も必要ないとされています。※1
但し、魚は肉と同じ皿に出してはいけないという規定があり、人により魚と肉製品の間には口を洗わないと食べられないと言う意見もあります。
そして、魚以外のパルヴァ食品の野菜、果物、穀物等の農産物は基本全てコーシャです。
ただ、土の中で育つ農産物と切っても切り離せない生き物が虫です。
生き物である虫には勿論コーシャのルールが適用されるので虫は食べることができません。農産物を食べるときは、必ず虫が中にいないか、葉の間に挟まっていないかなどを詳しく調べる必要があります。

以上がコーシャ食品を3つのカテゴリに別けた時、加工してない食品に対しての規定でした。
では、工場で加工した食品やレストランの食品はどうなのでしょうか?
工場では生産工程、保管倉庫の詳細確認、原材料等の現場でコーシャじゃない製品との混在の有無など各工程の確認がされています。

レストランでは、コーシャじゃない食材が料理に含まれたら、又は調理器具、洗剤等がコーシャでなければ、食材がコーシャであってもその料理自体はコーシャではなくなります。
なので、食材自体がコーシャな魚と米を使っている寿司もエビ、イカ、タコを切った包丁とまな板を使ってしまうとコーシャではなくなってしまうのです。また、一見肉要素が全くないように思えるグミやゼリーなどもコーシャではない肉からとったゼラチンが入っているとコーシャではなくなってしまいます。
このように、決まった食材、決まった調理法、決まった調理器具、決まった締め方等とても厳しい規定を日々ユダヤ人は守って生活しています。

※1 .Yehuda shurpin. “Why Don’t Fish Need Shechita Why is there a ritual way of slaughtering and preparing all kosher animals except for fish?”. chabad.org. 2021-3-18現在.
https://www.chabad.org/library/article_cdo/aid/113425/jewish/What-Is-Kosher.htm ,(参照2021-3-18)

※2 .Deena Shanker. “Less than 2% of the US population is Jewish. So why is 41% of the country’s packaged food kosher?” .QUARTZ. 2021-3-18 現在. https://qz.com/407157/less-than-2-of-the-us-population-is-jewish-so-why-is-41-of-the-countrys-packaged-food-kosher/,(参照2021-3-18)

Translate »