1930年代、まだコーシャ認証が世界中に広まっていない頃、アメリカでユダヤ教徒の中でも多くの支持を得ていた超正統派指導者のトビアス・ゲフェンにアメリカ中のユダヤ教徒指導者から次々とある質問の手紙が届くようになりました。
それはコカ・コーラがコーシャなのかどうかという質問でした。
当時からアメリカでとてつもない人気を誇っていたコカ・コーラはアメリカ系ユダヤ人からも愛されていました。
そして超正統派指導者のトビアス・ゲフェンが住んでいた地域が、コカ・コーラが本社を置くアトランタだったのです。
コカ・コーラに限らず加工食品、加工飲料にコーシャではない成分、材料が含まれていることにトビアス・ゲフェンは問題を感じました。
今となっては、アメリカの加工食品の40%以上がコーシャ認証を受け、スーパーマーケット等はほとんどがユダヤ教徒指導者からの確認を受けています。
1930年代から現代にかけて、アメリカでのユダヤ人人口は多いと言っても他の国と比べるとユダヤ人が多いというだけで、アメリカ国民の比率でいうととても少なく2020年度では2%程と言われています。※1
なぜユダヤ人はこのような少ない割合であったにもかかわらずコーシャ食品をアメリカ中に広める事が出来たのでしょうか?なぜこれ程多くの企業がコーシャ認証を受けようと思ったのでしょうか?
それには、コカ・コーラのコーシャ認証が深く関わっています。
コーシャの規則とはユダヤ教徒のそれぞれの聖書に基づく解釈とディベートにディベートを重ねた末に、2000年に渡る研究を経て開発された宗教的規則になります。
ただ、過去100年間で進化したフードシステムに当時コーシャの規則は数々の深刻な問題に直面してきました。
工場で大量生産されるようになった加工食品は、味、見た目、匂いを良くするため、また長持ちさせるために多くの食品添加物を混ぜるようになりました。
そして多くの製造者はこの工場で用いられる少量の添加物の出所を特定することはなく、少ないあまりラベルに記載しないなんて言うことも多くありました。
ではどうやってユダヤ教徒はコーシャである事を証明したのでしょうか?
産業革命以前のからコーシャの厳しい規則に従っていたユダヤ人は、工場で製造される加工食品にもコーシャの規則を適応させる必要がありました。
ユダヤ人から愛され、ユダヤ人消費者を探していたコカ・コーラですが、ユダヤ人の元に行くと聞かれるのが「コカ・コーラはコーシャなのか?」という質問でした。
一見簡単そうで、多くの企業が簡単に答えることが出来なかったこの質問にイエスと答えたことで、コカ・コーラはコーシャ認証を拡大させる上でとても大きな前例をつくりました。
※1 .Deena Shanker. “Less than 2% of the US population is Jewish. So why is 41% of the country’s packaged food kosher?” .QUARTZ. 2021-3-18 現在. https://qz.com/407157/less-than-2-of-the-us-population-is-jewish-so-why-is-41-of-the-countrys-packaged-food-kosher/,(参照2021-4-2)
※2. Roger Horowitz. “The Real Thing: How Coke Became Kosher”. Science history institute. 2021-4-2 現在
https://www.sciencehistory.org/distillations/the-real-thing-how-coke-became-kosher#:~:text=To%20document%20its%20compliance%20with,indeed%20meet%20Jewish%20dietary%20requirements. (参照2021-4-2)